「……お兄さ、」
[ぽつん。落ちる呟きも、表情と同じように強張っている。
お前さ、そんな顔することないよ。別にお前自身のことでもないんだし。
そう、心の中だけで呟く。]
「──"もう当分いいや"って言ったのは、まだ変わってない、んだよね?」
[触れてもいいのかな。そんな顔の、小さな問いかけ。
可愛いよな、と思う。
中学生の妹。大雑把で飽き性で、家では口が悪いくせに、学校では気を張りながら生きているらしい。
もうさ、やんなっちゃう。聞いてよお兄、今日、アヤノがさぁ。この年になっても、よく兄と話したがる。
そのせいで、こっちも女子事情に対して変に耳年増になった気がしないでもないけれど。
かわいいかわいいと言いふらす程のものじゃない。でも、良い妹だ。
心配や不安が、すぐに表情に出る。滲んでしまう。
そういうところ、素直で可愛らしいと思ってしまうのは、兄の欲目かな。]
(318) 2015/10/30(Fri) 22時半頃