― 回想・文化祭準備期間 ―
[正直に言えば、見とれていた。
七五三涼介。彼の演技の、特に泣きのシーンは本当に印象的で。
男の子が泣くってなかなか珍しいと思うんだけど、あれは、なんていうのかな、美しかった。
そんな彼が、泣き顔なんてさっぱり想像させないような笑顔で、あたしに話しかけてきたから。>>271]
あっ……。
[それがあたしに向けられた言葉だと気付くのに、ちょっと時間がかかった。
やだな、あたし、どんな顔をしてたんだろう。]
劇……あ、うん、映画の撮影のことかな。
すごーい、やっぱり使う言葉も役者っぽいなー。
いいよ、なんでも聞いてね!
スケジュールとか使う小道具とかは全部頭に入れてあるから、えっと、まかせて!
[彼の前ではいつもの調子を出そうとしても、ほんの少しズレる。
楽しいことのはずなのに。嬉しいことのはずなのに。]
(316) 2015/07/05(Sun) 23時半頃