[極細の冷製パスタをフォークに絡めつつ、来てよかったと言われれば、やはり多少は誇らしくは思うか。]
あぁ……絵とかをちょっと、ね。
美術学校行きたくて都会へ出たんだけど、なかなかそれだけで食っていくのも難しくてさ。
[若い芸術家が美術だけですぐに身を立てられるほど、世間は甘くない。
パトロンになってくれる人は居ても、目当ては自分の腕前ではなく…て。
破いて捨てた手紙の事とか、そんなことは口には出さないけれど。
もう少し頑張れなくはなかったとも思う。
けれど、先の見えない日々と、海の見えぬ風景に…あのころは少し心が疲れていたんだと思う。]
……ん?
どうした?
[向かい合った相手の、ふとした表情の変化。
どこか自分と同種で別種の渇望が、その中に揺れたような気がした。]
(315) 2013/09/04(Wed) 23時半頃