【人】 懐刀 朧

　……はぁ、ぁ、ん、……

[>>307己に触れる手付きは優しく、その指先が触れる度に己の恐怖や苦しみが弾けて消えるかのよう。
齎すもの全てを逃すまいと、視線はじっと直円の動きを見つめていた。
手の動きが優しいが故に、漏れる声も密やかに、甘く。だからこそ燻されているような心地を覚え、物足りなさを募らせていく。

促されるまま柔らかな寝台に身体を沈め、柔らかな唇を全身に受け止める。当面の役目を終えた今、吸血痕も鬱血痕も、隠す必要はなくなった。
内腿に触れる唇に、血を吸われる感覚を思い出してびくんと大きく腿が震える。
触られることのない性器はいつの間にか硬く張り詰め、とろとろと蜜を零し始めていた。]

　……ッは、ぁ、ああ、っん、ぅ、……

[震える身体は恐怖や苦しみではなく、快感に塗り潰され。
直円を見つめる双眸は、散々に煽られた欲に蕩けて、薄く涙の膜を張る。
ひっきりなしに細やかな、艶めいた声が漏れる口の端からは、細く唾液が糸を引く。

シーツを握りしめていた手が解け、直円の手を柔く握った。
そのまま導くのは、どろどろに溶けた、己の下肢。]

(314) nico 2016/06/22(Wed) 12時半頃