――叡刻大図書館《イントリアイム・ライブラリー》――
"違うぞ遣い手。この姿は今は亡き帝の姿だ。
……この通り、もはや雑音《ノイズ》の中にしか残っておらぬがな"
[図書館に漆黒を落とすのは、†の光が描き出した、質量のある蒼い乱像《ヴィジョン》。>>298
その姿は、廃者に堕ちる前の王を映し出していた。顔立ちや巨躯はそのままに、蒼く長い髪をゆるやかに流し、高貴なるくれなゐを纏った姿。
――獣王ノ血《ヴォルフ・リネージュ》の暴走によって分割された意識が形を成し、追憶の自意識を自律化させた姿]
"さて……話を聞くに、君達はどこからか逃げて来たのかね?
丁度良かった。帝《わたし》もこの身を持てあましていたところだ。
老体に鞭打たせるとは、聖杯《カリス》というのは、何と我が儘なのだろうね?"
[まるで杯を回すように、手首を動かす。
しかしその手元には何も無い。
ただ、ぼんやりとした力だけが感じられるだろう]
(312) 2013/05/28(Tue) 22時頃