[ そうして街を練り歩く。
ある年は肌寒くて、ある年はまだべたつくような日。
必ずフードは被る。顔は見られたくはない。
探すのは、電話ボックス。
出来る限り人通りのない場所にあると良い。
見つければ、その扉を開いて、四角の中に入り込む。
息を吸う。吐く。静かだ、と思う。
呼吸を整えて、ポケットから、あるカードを取り出す。
毎年配られる、配られた、それ。
唾を、飲み込む。
ああ、本当に大丈夫だろうか。俺実は親に殴られているんです、そうなんだじゃあ何とかするね、はい解決、みたいな、そういう問題じゃないんだ。そもそも男子高校生が殴られたところで、一体どうなんだ。抵抗は出来なかったのか、何て言われるだけじゃないか?いや、でも、違うんだ。抵抗何て、出来ないんだ。分かってる。分かってるから。けれど、うちではそんな相談受け付けていません、って言われたらどうしようか。いや、きっと多少電話を掛ける先が間違っていたとしても、きっと何かしらの助けにはなってくれる。なってくれる筈だ。 ]
(307) 2016/09/20(Tue) 04時半頃