―回想・2年程前、小川の傍―
[自殺を防ぐためだけなら、阻止し終えた時点でそのまま離れればいいものを、ラルフの舌はいまだ自分の口腔を犯し続けていて>>212。
舌が粘膜を掠る度、痛みを通り越して灼熱感を訴える背に、別の感覚がわき起こる。
ざわざわとしたそれに居心地が悪さを感じても、力の入らない体はそれを享受するしかなく。痛みに集中することでその感覚を意識の外に追いやろうと足掻いていたのだが、歯列をなぞられその感覚が持つ名を理解する。
それを何とか否定しようとすれど、好き勝手に動くラルフの舌はまだ熾火のようであったそれを、徐々にだが、確実に深めていく。]
……――ふっ……んぅ……
[ようやく、彼の舌が出て行ったときには、酸欠と、それ以外の理由で血の気の薄い頬にも少しは朱が上り、目には涙が浮かんでいたか。]
(304) 2014/01/30(Thu) 23時頃