俺とは違ってお前、良い子だし。
[メロンパンを一口齧る。
あまくて、あまくて、子供の好きそうな柔らかい味。
ほんのりと舌に残るだしの風味を上塗りするように、飲み込んだ。
それからどういった気まぐれな彼女の中にあったのかは分からない。
ただ、御堂遥の責めるような声色はいつだって忘れられない。
偏食は良くないと言われてもピーマンのおかか和えは断固拒否したし、その癖して生焼けじゃないハンバーグは割と物欲しげに見ることはあった。
彼女が子供を責めるというならその分、子供のように振る舞ったのは一種の天邪鬼気質故の行動で。
毎度お裾分けをもらう時。
変わらない卵焼きの味に案外頑固なんだなと思いつつも口にしない。
それは彼女が亀井と名を改めたとしても。
俺の両親が渡ったかもしれない道を選んだ彼女の両親がどうあろうと。
俺の中の遥という人間は変わらない]*
(302) 2016/09/13(Tue) 11時半頃