―数日後・森の湖―
[オスカーと対峙し、どうにも互いに座りが悪いのは
久々に顔を合わせたから、だけでは無いだろう。
失った記憶を、彼もきっと思い出している。
思い出した上で、失っていた最中の記憶と同化している。
その眸に未だ、深い悲しみの色を重ねてしまい
少しばかり、双眸を歪ませた。
『一緒に市場に買物に行かないか?』
くらいの、軽い声音で告げた言葉の重さは、理解していた。
けれど、彼の中の"護りたいもの"は外の世界だけでなくこの、狭い空間の中にも居るのではないか。
"支える手"を仮に持っていたとしても
己を含め、皆――
生きていていいのだと、存在していいのだと
差し伸べてくれる手を、欲しているのだ。
そして図らずも目前の彼もまた、同様に欲しているのではと――
憶測も多大に含まれた、己の勧誘だった]
(294) presage 2014/02/11(Tue) 03時半頃