キミの勘の良さに敬意を表して、一つ手札を見せてあげるよ
[抜き去った安全装置の細い棒が、床へ滑り落ちて硬い音を立てる。
ポケットから出した握り拳を半分開いて見せれば、男の手のひらに包まれた金属と火薬の塊が相手にも見えるだろう。
その滑らかな楕円形の正体に思い当たるまでには、しばし時間が掛かるかもしれないが。]
『よぉく狙って、思い切り、投げな』
[相手に聞こえないよう微かな声で放ったのは、他ならぬ自分自身へ向けた命令。
その瞬間に腕は振り下ろされ、記念すべき第一投目は放物線を描いて標的の元へと飛んでいく。
自らが放った手榴弾の着地点を見届けることなく、黒いパーカーは身を翻して廃墟の外へ。]
『さぁ、走るよ。もっと早く、もっと遠くへ
振り切るまで、どこまでも』
[命令に応じて、二本の脚は力強く地面を蹴り、細く入り組んだ路地裏を駆ける。
あんないかつい装備と正面からぶつかってなんていられない。まともにやり合えば、此方の負けは火を見るよりも明らかだ。
だから反撃を食らう前に、姿をくらましてしまおう。
勿論、今のでポイントが奪えるなら、それに越したことはないんだけれど。*]
(294) 2014/12/09(Tue) 01時頃