[医師クラスの権限を持とうとも、自分は医師ではない。研究者でもない。
人の、魔の活かし方を知っている、それを殺し方に転じる、殺し屋でしかない。
ただ、それを知るからこそ――助かる人間は、何を捨てても助けたくなるのが、五月雨の血だ。
与えられた資料は全てに目を通し、検査結果にも納得している。
それ故に、必要以上に坂町を信用していると言ってもいい。
書き換えられたデータだと、知る由もないままに。]
……坂町さんよりは、平気です。
[近寄るなと言われれば、にべも無く言ってみせる。
そうした皮肉も交わせる間柄だと、自身は坂町をそう捉えていた。
触れた身体は熱を帯びて、二の腕からは特にじわりと体温がうつった。
――通常、淫魔は常時発情しているため、自身の興奮により体温が高くなる。
しかし、この状況、この数日の経過の積み重ねで、それに気づけるはずもない。]
(294) 2016/06/08(Wed) 19時半頃