[必死の願いが届いたのか青ざめながらも彼女(>>291)は矢に手をかけてくれた。
こんなことを彼女にさせるのはいたたまれなかった。痛がったら彼女も気が引けてしまうだろう。ひたすらに歯を食いしばって声を漏らさんとした。
鉄と肉が擦れる感じが気持ち悪い。抜かれたのが分かる。]
こんなことさせてごめんなさい…
…ほんとうに、ありがとう
[真っ青になってへたりこむ彼女の肩に額をあてて自由な方の手で背中を優しく抱きしめた。
それから首元から服を引っ張って肩を出し、焼灼止血の準備をした。
彼女が持っていた蝋燭の火で鉄の矢の先をしばらく炙る。傷を焼くのは怖かったがその間も血は流れ続け、死を選ぶよりはこうするしかないのだと腹をくくる。襟を引き寄せて口に含んでもう一度歯を食いしばり、充分に熱したのを見て傷口にあてがった。]
……〜っ、!
[声にならないような悲鳴が漏れたが、肉が焦げる匂いがして傷口が火傷でふさがる。骨まで焼けるような痛みで額に汗がにじんだ。
王子は本気で自分らを殺すつもりなのだと改めて実感が湧いた。]
(292) 2016/01/13(Wed) 11時頃