─ 回想・中学生の、壱岐リツの話 ─
[中学3年生の、秋の深まる頃。
夏も終わって受験勉強もいよいよ本格的になってくる、っていう時期のこと。
"それ"を自分に告げたのは、3年間を仲良く過ごしていた、面倒見が良くて、どこか苦労性な友人だった。
親の望む進路と、自分の進みたい進路が食い違ってしまっただとかで、悩んでいたんだったと思う。
落ち込んだような顔で、しんどいなぁ、って零していた。
俺は、何て言ったんだっけ。
その後のことはくっきりと覚えているけれど>>2、自分の言葉はどこか曖昧だ。
自分のやりたいこと、やればいいんじゃん、とか。
きっと、そんな感じのことを言ったんだと思う。
その時の、友人の。
眩しいものを見るような、それでいて苛立ちも含んだような、いろんなものが混ざり合った視線。>>2>>3
初めて向けられた苦いそれに、自分は特に何も返さなかった。
本当は、"返せなかった"のが、きっと正しい。]
(288) 2016/04/14(Thu) 00時半頃