[──人形の主は殺生を厭う。
生を弄ぶこそが愉悦ゆえに、死で終わらせることを許さない。最小限の”食糧”以外、最後まで味わい尽くすことを望む。
そして人形と贄の命を天秤に掛ければ、後者が勝る。
>>282ゆえに爪先は急所の場所を狙わず、亀吉の肩の傷をさらに抉るに留まった]
[>>273追撃を放とうとして、横から飛来するものがある。
痛覚を遮断して無理矢理脚を動かせども、水差しは振るわれる前の屈強な腕の筋肉に当たり、あっけなく瓶が割れる。
中身はただの飲み水だ。それでも、水であることに変わりない。
大きく全身を震わせて、一瞬──致命的な一瞬、動きが止まった]
──あ、 がッ、
[白い雷撃が魔を穿った。
勢い良く床に叩きつけられ、皮膚と言わず肉を焦がし、狭い病室内を転がり、やがて止まる。
眼を見開き、全身がびくびくと細かく震え、立ち上がる気配はない。
かくして亀吉の目的通り、「ヘクター」は無力化された]
[しかし。
水を受けて致命の臓腑にも雷撃が通ったことは、
彼の意図とは、異なったかもしれない]
(287) 2016/06/12(Sun) 22時半頃