[ 躊躇うのは、駆けつけてきた者たちに大怪我を負わせてしまうかもしれないからだ。
入ってくる者は「ヘクター」が敵の手に落ちていることに動揺することなく、獣の姿に怯まず、人間離れした素早さとパワーに対処できなければならない。
少なくとも復帰したとはいえ、四井にそれができるとは思えなかった。もう一人も誰かわからない以上、踏み込ませるのが得策とはいえない。
説明が終了してからなら対応可能かもしれないが、おそらくそこまで喋ることを許されないか途中で入ってこられるかのどちらかだ。
注意が他に向けば亀吉が反撃できるチャンスも生まれるが、四井たちに怪我を負わせる前に倒すということはおそく不可能だ。
現状、耐えて油断させたところを不意打ちし、気絶させる程度まで出力を上げていって捕縛するのが最善ではないだろうか。
亀吉は沈黙を貫いた。]
(287) 2016/06/11(Sat) 02時半頃