―回想:文化祭会議―
[出し物が演劇と決まって、さぁ配役を決めようとなったとき、チラチラとこちらを見る視線と、くすくすと内緒話をする声がとても耳と目についた。
そう言う態度をされるのは、慣れている。だけどクラスメイトなんだからさ、もっと……まぁいいや。何度も言ったけど、結局普通に接してくれる生徒なんて一握りだった。
期待の視線。やってくれるだろうか、でも、学校の出し物に出てくれなんて、頼みにくい。そんな視線を感じて、…は内心大きくため息をつきながら手を挙げた。
嫌な訳じゃない。ただ、やってほしいと思うなら頼んでくれていいのに、とは思う。
実際、舞台は好きだ。最近はドラマやモデルの仕事が増えて、舞台での仕事は減ってきている。それは、自分のせいだというのも、わかっているけど]
俺で良ければ、やってもいい?
主人公の、学生役。
あ、お涙頂戴のシーンある?俺、泣く演技得意だぜ。
[そうやって少しおどけて言うと、クラスが笑いで包まれる。
その中にもしかしたら疎ましそうな負の視線を投げかける者も居たかもしれないが、それはそれで慣れている。いちいち、気にしていたら負けだ]
(286) 2015/07/05(Sun) 22時頃