[ ―― もっとも いまではその世界は、] ……、[ 揶揄するような軽口は急に ぴたり 止み 傍らで なにかを考え込むように左手を広げ、 じい と視線を落とす俺には 草臥れた『学生の本分』云々は 意味ある言葉として届かず、 『そうだねえ』と聞き返すことなく適当に相槌を打つ 今でも偶にある‟夜”を思い出して ひどく 穢れてみえる手をごしり なにもないけれど 何かを拭うように 手をカーディガンに押し付けて 足元だけを見ながら 彼を追えば、 階段を上って、三階へ向かう * ]
(285) 2015/01/24(Sat) 05時半頃