―昇降口―
[校舎に踏み込んだ瞬間、ひやりとした空気が頬を撫でた。
コンビニの時とは違う、「涼しさ」じゃない「薄ら寒さ」
すぐに追いついてきた七尾が上げる弾む声>>254も、奇妙に響いて聞こえた気がする。
思わずその場に立ち竦み、恵冬はぎゅっと手を握りしめた。
けれどささやかな違和感は、ひなこの言葉>>267に淡雪みたいにふわりと溶ける。
皆で協力して作り上げた、楽しいお化け屋敷の記憶。
音響の仕事と掛け持ちしていたからあまり見ることはできなかったけれど、帆北の幽霊姿はとても良く似合っていた。
洋風の内装も相まって、受け付けやお化け役の皆のハロウィンのような趣のある衣装は、仮装パーティをも思わせたものだ。
恵冬自身は裏方で仕掛けを動かす担当だったけれど、驚いてはしゃぐように逃げ去る他のクラスの子や一般のお客さんを見ると、役目を果たせたみたいで充実感があった]
(285) 2015/06/19(Fri) 02時半頃