[こうも生きられた奇跡こそ珍しく在れど、それ以外は、何処にでもありふれた出来事の繰り返しだ。奪い合い、争い合う、勝てば多くを得て、敗れれば失う、それの繰り返し。
悲観する程の事は無い、幸せだった時の方が多く、むしろ自分は幸運を持ち合わせていると思っている。けれど、彼には気の毒な程不運な男に聞こえただろうか?
そう聞こえるなら、そう見えるなら、彼にとってはそうなのかもしれない、違うとわざわざ否定する事はしない。
代わりに、微笑む。今迄歩んだ生を恨んで居ないと伝える様に]
一般的には、餌…――家畜と云うと聞こえが悪いらしいな、だが俺の認識ではそうではなかったから。
家畜は、資材であり、家族だ。
護り、育み、感謝はすれど、蔑み、乱暴に扱うものではない。
その辺りはまァ、文化の違いの一言に尽きるな。あの頃は余り、理解出来て居なかったが。
[血子が居ない、その言葉には、頷きも、否定もせず、ただ微笑む事で濁した]
妻は元は赤の他人だが、連添えば家族だ。それと同じ事。
家族に、それ以上もそれ以下も無い。
それに、護りたいものも、護らなければいけないものも、俺の腕には重すぎる。
(282) 2014/02/01(Sat) 17時半頃