はっはっ、そう面白い話は期待するなよ、
俺はどちらかというと口下手だからなァ。
[何より先ず語彙が足りない。真面目くさった顔で己の欠点を告げる。
知ってはいるが学ぶのは如何も苦手で、改善する気概は更々ない。
足りぬ言葉で不足ならば尋ね促して言葉を誘いだしてくれればいいだけの話だと、人任せに思い付いたままにつらつら話す]
…元は、な。
その後6度、拾われ、新しい家族に迎え入れられた。
…それで、5人の養父と7人の養母が居る訳だ。
孤児院なんてそんな大層なもの、存在しない地域だからな。
お蔭でのたれ死なずに済んで、此処まで無駄に育ったという訳だ。
有り難い話だが……その幾つもの恩義に報いる事は、一度も出来なかったなァ。
[放牧民、と言われて不思議そうに目を瞬かせる。
集落を家族と呼んだと思われたのかと納得して、説明を足した。
話の途中、挟まれるのは食事への感想のみ、律儀に一つずつ、味わっては述べられる言葉に、はにかむように擽ったそうに笑って、なら良かった、ありがとう、と短く応えただろう]
(281) 2014/02/01(Sat) 17時半頃