―間の世界・1日目17:30・廊下―
[教室から廊下に出て、探す視線が麻倉の背を見つけて。駆け寄った。
駆け寄らずにはいられなかった。だってここは。何も分からないこの世界では。
見失ったら、また会える可能性なんて、信じられないんだ。
彼の手首に伸ばした右手、捕まえる前に。
振り向く顔と、彼の手から零れるナイフがあった。>>260
俺の右手はしっかりと麻倉の手首を捉えていて。
振り払おうとするかもしれないと予想していたからか、その力は握力の限り。
脱力した状態ならきっと、痛みを覚えるくらいには、男の力のはずで。]
ちーちゃん、……。
[その唇は、確かに俺の、名前を呼ぼうとしたように、見えた。
良くは聞こえなかったけれど。
やっと、やっと。麻倉に触れた手は、抵抗がないと分かると、掴んでいた力を緩め、掌に滑らせて。握り直す。今度は柔く。]
(280) 2015/04/03(Fri) 22時半頃