[ 少女が時折聞く“僕”の声は、当然ながら実体がありません。名探偵の彼女は笑いはしませんでしたが、それこそ、幼い子どもが生み出した空想上の友人だと思われてもおかしくはないのです。
それでも少女にとっては、手紙と指輪を見つけたとき以来、“僕”は一番近しい存在でした。
絵を描きながら、アトリエで沢山の質問をしました 。
その中には、“僕”がなんと答えたか覚えていないものもありましたが、最後の質問の答えだけは、忘れないでいようと思いました。]
『もしも、おしろにいけたらどうしたい?』
( )
[ 描いた絵は、家族にも誰にも見られないように必ず
処分していました。
絵を描くことは好きでしたが、評価されるのは嫌いでした。(文通相手に送った手紙に描いた絵ならば、残っているかもしれませんが)
だから彼女の描いた絵は一枚たりとも残っていません。
家族を喪った現在ですら、習慣的に処分しています。
思い出にするには、まだ時間が足りないようです。]*
(278) 2016/07/28(Thu) 19時頃