[Jが暗示にかかったと察するのは、>>263己の背中を床に強かに打ちつけたが故だった。
同時に後頭部を打ちつけ、その衝撃で髪を結っていたゴムがぷつん、と切れた。
あの理知的なJが、己を求めて涎を垂らし、己に欲を露わにしている。ふ、と浮かぶ笑みは思慕と愉悦の入り混じるもの。
ずっと、こうなることを望んでいた。彼の腕に抱かれることを願っていた。しかし、それが叶った今、己は彼の側にはいない。
ぽろ、と一筋、目尻から涙が零れた。]
…………J。
[頭上で纏め上げられた両手を戒める力は、骨が折れそうなほどに強く。
しかし苦痛に顔を歪めるではなく、あくまで愉しげに笑うかのような吐息を漏らした。
肌を隠すシャツはJの右手で容赦なく引き裂かれ、外観だけは己の画策した通り、さながらJが欲に溺れて己を襲ったかのような。
この状況の真実を知るのは、己とJだけ。
どろりとした毒が齎す、互いだけの秘密だ。]
(276) 2016/06/12(Sun) 22時頃