(このビルは5階まである。
――一番突破力が高いのは、)
[――水を放ち、触手の液を払いながら考える。]
(しらみつぶしに水を流して通路を探らずとも、こんな時、――武町の能力があればサーチも容易だろうに。)
[同じ水の属性を持つものとして、ヤナギ・ベネットは武町朧に、ゆるやかな仲間意識を持っていた。彼が魔と人のハーフだとは知らなかったが、自覚なくどこか似通った気配を感じていたのかもしれない。
武町はキルロイとJ以外の皆にそっけなかった。
ヤナギ・ベネットに対してももちろんそうで、
一定以上の距離に近づくな、と暗に謂われているのが肌でわかるほど。特に自分に対しては――というのは、自意識過剰だろうかと考えたこともある。
それもあって、挨拶をしたり、
声を掛けたりはしつこくない程度に心がけていたつもりだったが。
己が前線に出るたびに彼が暗い思いを募らせているとは、――本当に、まったく思いもよらないことだった。]
(274) 2016/06/05(Sun) 13時半頃