[溜め息の音。真っ直ぐ見つめる俺の視線を、雨宮は避けるように顔を逸らす。
窓から差し込む光が、色素の薄い彼女の髪を、どこか美しく彩った気がした。]
「……待てませんよ。そんな気の長い話。」
[しばしの間を置いて。
呆れたように、でも、どこか安らいだような表情を浮かべて、彼女がこちらを見つめ返した。]
「それじゃあ、そうですね。例えばの話をしましょうか。
……私が、先輩の将来に期待して、少しでも生きていたいって思えたら。先輩の勝ちでいいです。」
[声はいつもの調子で、こちらをからかうように。]
「そうじゃなかったら、私の勝ち。
私が勝ったら、毎日忘れずにお墓参りに来て下さい。お供え物は、甘いものがいいです。」
[挑発するような彼女の視線を、真正面から受ける。
今の俺にできることは、力強い言葉をぶつけることだけだった。]
(273) 2015/06/25(Thu) 23時頃