ー図書室ー
[ オスカーの要望通りにガルディア語を修めたポピュラーな辞書が、ドンと彼が突っ伏している横に置かれる。
赤を基調とする、鳥竜種の革を鞣した表紙、其処には灰掛かった白色で、文字と云うよりは絵に近い風で辞書の名が描かれていた。
音に反応した真紅の双眸が、置かれた辞書から、次第に金眼の少女へと移り。]
あぁ、そうだよ、この辞書だ。助かった、本当にありがとう、真心を籠めてそう云わせて欲しいね。おかげで一晩を此処で明かさずに済みそうだ、ワタシもやはり自室で床に就きたいからね、他の場所を使うのは怠い、かったるい、面倒臭い、其処から派生する凡ゆる事象が怠くて堪らない……まぁ兎も角、キミの勤勉な助力によって無事に辞書を手に入れることが出来た、具体的な返礼を考えるのも正直怠いのだけれど、そうだね
[ むむむ、と顔の皮膚を寸とも動かさずにオスカーは思考の渦へと身を投げ、そして、]
オスカー、オスカー・フィニオン、『怠惰』のオスカー、此れがワタシの名だ、もし今後、キミが面倒毎に巻き込まれたのなら此の名前を使ってくれて構わないよ、此れを所持していれば説得力も増すだろう、いざと云う時に使うといい
(273) 2014/07/09(Wed) 16時頃