[懸念が肯定される言葉>>220が放たれれば、男は普段人には見せない心情の機微を覗かせる。
鋭い刃をかいなに抱いたように、息を詰めることで。
けれどトレイルは、今を嬉しいと聞かせてくれる。
気づけば追い抜かれた身長差のぶん、見下ろす瞳を見返して、小さく笑ってやった]
そうだな。嘘を、つかなくて良くなったんだ。ならば、今会えることは素直に喜ぶべきだろう。
……気にするな。言っただろう、盾になると。
俺のほうこそ、盾として傍らにいられなくてすまなかった。
[済まないと口にする青年の腕の力に静かに笑う吐息をこぼし、そうして宥める片手の指先は今度は細めたトレイルの目許を撫でた。
唇に浮かべる笑みは、昔、兄として振舞っていた時のまま。
けれど、視線はこちらが上げるほうになっていた]
(270) 2014/07/13(Sun) 00時頃