…では、お答え致しましょう。
その前に、犬と主人の関係、といえばわかりますでしょうか。
……僕は犬なんです。あの人に従いたかった。
[先程よりもか細い声が口から漏れる。犬と主人。血は繋がっていなくとも、信頼関係の保たれた上下関係。
恋愛感情ではない。愛など必要なかった。あるのは歪んだ忠誠心。自分はずっと、彼女の言葉に付き従い、側にいれたらそれで良かった。
与え続けられるのは幸せだった。男の気持ち>>257を理解できる能力でもあるのなら、若者は嘲笑っただろうか。
でも、彼が欲しいのはそんなものではなかった。
「自立なさい。」「依存はだめよ」と、その言葉を言われることが不快で、自分の中で黒いものが溜まっていった。
だからこそ。彼女の血液を持つ一族が羨ましくて。一部を共有する者達が愛しく、尊くて。娘も妹も、すべてすべて。
触れたかった。
それを見かねた彼女は自分を無理やり、
突き放した。]
(267) 2016/07/28(Thu) 17時頃