[──頭に触れる手を、特別なのだと思ったこともあった。そう人見知りをする性質ではないとはいえ。幅広い世代が入り混じる輪に飛び込んですぐに友好関係を築けるほど、人慣れしていた訳でもない。気安く話せる同年代とも違う、ずっと大人びた様子の彼から、まるで慈しむように愛おしむように伸ばされる腕は。それはそれは、嬉しかった。しっかり固めた髪がぐしゃぐしゃと乱されても、今ではとっくになりを顰めた笑顔でくすぐったげに笑っては、その感触すら心地好いと眼を細めた、はず、だったのだけど。]
(267) 2015/11/12(Thu) 00時頃