[『厳選・日本の妖怪大図鑑』
表紙にはっきりと刻まれたタイトルと、並ぶそれらしい妖怪のイラスト。
日本の妖怪らしく水墨画で描かれていいるそれは、確かに雰囲気は出ているが、しずくのおばけ屋敷のイメージにはそぐわない]
えと、私、これはこれで読みたいかも。
うちのクラスのおばけ屋敷のイメージには、合わないと思うけれど……。
[フォローなのか何なのか、自分でも曖昧な感想を挟みつつ、彼自身の懸念を控えめに肯定する。
豆鉄砲をくらった鳩みたいな顔を、少し後に綻ばせて、それから本探しを請け負った。
後日、恵冬は図書室から一冊の本を選び出し、彼の元へと届ける。
決して有名ではないけれど、本の装丁やイラストの雰囲気が、しずくのおばけ屋敷のイメージに合うだろうと思った絵本だった。
彼に手渡す前に、一度だけぱらぱらと本のページを繰り、内容に目を通した。
死んだばかりの、ひとりぼっちの寂しい幽霊が、魔物の集う洋館で友達を作るまでの短いお話。
薄暗くて怖い洋館が舞台なのに、物語は始終優しくて、良い絵本だなって、そう思った]
(265) 2015/06/25(Thu) 22時半頃