―回想・9歳夏―
[いつからルーカスのことを思っていたか、
そう聞かれても明確な答えは見つからない。
気づけば兄と呼び、その後ろをついて回って、
好意はいつの間にか姿をを変えて、そして今も残ったまま。
それでもあえて始まりを見つけるなら、話は11年前に遡る。
あれはまだ自分のことをぼくとよんでた頃、9歳の夏だった。]
にいさん、来週はこれないの?
これないなら、ぼくが行くよ!
[夏休み、毎週末遊びに来てくれた彼が、来週は…と言った。
それならと告げた案も、申し訳なさそうに、用事があるんだと断られてしまった。]
そう……わかったよ、にいさん
[内心の落胆を少しでも隠すように、笑って答える。
少しでも彼に近づけるようにと背伸びしていたのもあるだろう。
そうして見送った後、母から彼は遊園地に行くのだと聞いた。
『カノジョ』かしら、なんて楽しそうに言う母の言葉が、いつまでも耳に残っていた。]
(263) 2015/11/24(Tue) 19時半頃