>>244
[五月始めの夜気はまだ肌に冷たい。少し冷えた首筋を何気なく己の掌で拭いながら、相手の返しを受けた表情は今の応酬を僅かばかりは楽しもうと試み、口端歪めてから眉を上下させ、わざとらしい、人により苛立ちを煽るような笑みを継いで浮かべ]
キャンキャン泣き喚く犬にツッコム趣味はねーって事だ。アンタはクソ煩さそうだしなァ?
ちっと黙るなら考えてやるってんだ。面だけは悪くねェ。
[相手にとっては心外なだけであろうと、予想せずともわかるような言葉を敢えて選んでの会話。鼻をまた吐いた息で鳴らして]
善良な一般市民さまに見えねー事はねーさ。…今は都合は良いがね。
──ついて来い。腰でも抱くか?そっちの方が自然だぜ。
[メイン、と。言われるのには、今は訊かずにただ軽く肩を竦め。デニムの片ポケットに引っ掛けていた指を落とすと、最後の一言はふざけ半分本気が半分。夜を歩む己を誰が見ているかも知れず、いつもの男漁りかと、思われる方が都合は良い筈で──恐らくは、お互いにとって。そこに伴う感情はともかくとして、だ。
己も良い気分ではないと、示すが如く片眉動かして見せながらも、相手が避けなければ伸びた左腕は腰に乗った筈]
(262) 2013/07/21(Sun) 13時頃