―しばらく前/別館・バーナバスの客室―>>200
[それからどれほど話しただろうか。
もう一度、バーナバスと対面したいというアイリスの強い願いに押されて、自分が同行するという条件で、また死体のある部屋に戻った。
どんなに諌められても決して譲らぬ彼女の姿は、たおやかな外見の内側に強い芯のあることを窺わせた。
彼らが再び部屋を訪れた時には、既にフィリップの指示でバーナバスの遺体からは仮面が外されていた。
遺体の顔は、熱した蝋で封印されていた所為か一面火傷に覆われ、更に仮面を引き剥がす時に皮膚の一部が剥がれたのか、元から傷つけられていたものか、とにかく酷い有様だ。
その無残な顔面を、時折意識を失いそうになりながらも、まだ赤みの残る眼で食い入るように見詰めるアイリス。
彼女の邪魔にならないよう脇に控え、自らもバーナバスの遺体を見下ろす。
左手の手袋を指先でそっと捲くると、見覚えのある色合いの義手が見えた。
やはりこれはバーナバスの死体らしい。]
(261) 2011/02/09(Wed) 16時頃