[わたわたと大ホールを飛び出した彼女は、とりあえず。と、さっき感じた高まった気配の方向へと足早に進んだ。
残念ながら今は霧散しているそこに、まだ誰かがいるとは思わないが、それでも偶然を装って飛び出すくらいはできるはずだ。
人にもよるけど、下手に隠すから気配は読まれるんだってのは師匠の言。
それに、あたしはそんなスニーキングスキルなんて持ち合わせていない。初対面っていうならともかく、二日間使ってアホな見習いを演じたので(元々が間が抜けているので、演じるもクソもないのだが)、唐突に飛び出しても警戒は少ないはずだ。
今のところは芙蓉以外に自分の正体に気づいたものはいないだろう。
あの執事のハワード……ウォルター家のものだったか。
情報の売買をしている師匠から聞いた話だと、ウォルター家に関わるとろくな事がないという]
(260) 2014/11/08(Sat) 17時半頃