[拳の傷を、いつもポケットに忍ばせてある小さな絆創膏で隠して、教室への道を歩く。
周囲から漂う香りに、刺激される空腹。
他の皆も同じように腹が減る頃だろうか。俺だけだったら情けないが。
ふと思いついて、近くにあった、喫茶を開いていた教室に飛び込む。
そこにも案の定、誰もいない。だが、机の上にはしっかりと飲食物が並べられていた。
……この空間のことを考えると得体の知れないものだが、食えそうではある。
毒見をするつもりでひとつ、サンドイッチを手に取り、頬張る。
文化祭の時に口にした味そのもの。ハムとレタスの、ポピュラーな風味。
無事に食えたことを確認すると、そこにある飲食物を持てるだけ持って、
テーブルクロスに包んで運び出した。
……立ち去り際、誰もいないといえど、さすがに無断で持っていくのは変な罪悪感があったので、
書き置きと、千円札を数枚残しておく。]
(260) 2015/06/21(Sun) 15時半頃