[最近は無くなったものの、夕はここに来た当初よく魘されていた
昼間は賑やかな住民に囲まれていても夜は二人だけ、誰かに相談出来る性分ではないこともあり随分と困ったものだった
ある日あまりにも可哀想に見えて彼女を起こせば、『置いて行かないで』幼い少女には似合わない哀しい言葉を叫び泣き出してしまい、その時ばかりは自分もおろおろとしているのが表情に出ていたことだろう
どうしたと聞いてもまともに答えは返って来ず、困りに困った末に覚悟を決めて
小さな花を手折らないよう優しく抱き締めて一言囁きかけあやすように背中をぽんぽんと軽く一定の間隔で叩く
あえて深く語らないその言葉は幼い夕には尚更理解出来ないものだったかもしれない
けれどそれでいい、互いの過去を語り合う傷の舐め合いなんて必要ではないのだ
彼女はまだ、真っ直ぐ育てるのだから。ただ独りじゃないことだけ分かってくれたらいい
……分かってくれているのだろうか*]
(260) 2013/12/31(Tue) 20時頃