─回想:マダムの娘─
[ジェフに子供はいない。妻もいない。恋人もいない。
いや、恋人は正確には“いた”。
あまりに女っ気のないジェフに両親が用意したのだ。
何も一族経営にしなくとも優秀な部下から選抜すれば良いと考えていたジェフからすれば面倒な話ではあったけれど。
あらゆる手段を用いて交わすには歳を重ね過ぎた。
困ったものだと思いながらも母は反対しなかった。
父を言いくるめるのが得意な母だ。
形だけでも嫁はもらっておけだなんて母親の台詞とは言いがたくて困ってしまうのだけども、結局それも受け入れられず、婚約まではいかなかったのだけども。
まあ、絵画に夢中な男だと知れ渡れば、好き好んで望まれる訳でもないと思っている。
そんな男だが、自分の姪にあたるメアリーの誕生日が近いと知った時は、大いに悩んだ結果、大きなテディベアを贈ったものだ]
(258) 2016/07/28(Thu) 13時半頃