【人】 放蕩者 ホレーショー

[噛み締められた唇から流れ落ちる赤を舐め取りながら癒しの力を注ぐ。痛みも苦痛も否定して、どんどん染まっていけばいい。
そうしたら……多分俺はすごく幸せ。
口の中に広がる鉄の味すら心地よい。
ぱたぱたと揺れる尻尾が可愛くて、俺はヘクターの汗の滲む額に口付けた。

いつものヘクターからも俺を押し倒してきた時の彼からも想像出来ないような甘えたな格好に、きゅう、と胸が疼いた。]


……ん？


[気持ちいい、の次に唐突に紡がれたのは、あの子供みたいなのから呼ばれた呼称で。
少し前まで自分がどこの何だったかすらあやふやだったのだけれど、誰か愛しい人がいたことは覚えていて……それが誰だか分からずにずっと彷徨っていたけれど、漸く一つ答えを得られて俺はヘクターの蕩けた頬に口付けた]

(257) ヨキ 2016/06/21(Tue) 22時半頃