― 医務室 ―
[会議室から消えた姿は、しばらくの間をおいて医務室に現れる。
荒く、熱を持つ息を吐きながら、手元は努めて冷静に、二つの薬を調合していた。
一つは、キルロイの症状を抑える薬。
もう一つは、Jに投与したものと同様の薬。
キルロイの薬は小型の注射器に収め、Jへの薬は床へと零す。
それが床を汚すより早く、しゅる、と小さな水が渦を巻き、薬液を巻き込んで消える。
一通りの作業を終え、はぁ、と大きく息を吐いた。
やはり、経口では効力に乏しい。全く効果がなかったわけではないが、己の思うように彼を狂わせることは出来なかった。
しかし、Jが完全に薬効から逃れることは最早難しい。ならば、より強い薬を投与すれば良いだけのこと。
キルロイに与える薬は正しく、彼の症状を抑える効果のあるものだ。しかしそれは点滴の前に与えられていた注射と同じ配合のもので、つまり今の彼への効果は期待できない。]
(255) 2016/06/08(Wed) 09時頃