[ その後身体を清め、病院で目覚めても、貞次は快楽を求め続けた。
一僂の望みをかけて貞次と毎晩寝たこともあったが、亀吉の傷が抉られただけだった。
もう貞次は二度と戻ってこない。そう諦めた瞬間、亀吉の心は完全に壊れた。
後で聞いた話だが、手練れの退魔忍で編成されたチームに捕縛され、投獄されたという。ところ構わず放電し、吠え、手がつけられなかったらしい。殺すことも視野に入っていたのだとか。その間の記憶はない。
「貞次の仇も取らないでそんなところで朽ちるのか」
と、見舞いに来た誰かが言った。その一言で融解していた自我はたちまち形を取り戻した。
貞次が帰ってこないのならば、せめて仇に同じ屈辱を与え、首を持って帰りたい。
急に落ち着いたことを不審に思われたが、模範的に過ごしていると、1年で牢を出られた。防衛の任務と教育の任務が多いのは不満だったが、口には出さなかった。]
(254) 2016/06/05(Sun) 06時頃