――――幸あれ。
[かざした手のひらの上に、音もなく白光が灯る。天に聞き届けられた祈りが加護となって顕現する。カリタス家の者が加護を得るには、こうして奇跡を乞う必要があった。
闇を帯びた霧を払うには明らかに力不足の、まがい物の光。
疑似光球は太陽の周りを公転する惑星のように、彼の周囲をくるりと回って消失した。後には輝きも、熱も、なにも残らない。一度は退いた薄暗さが、より影を色濃くして戻ってきたような錯覚すらあった。彼はため息をついた。]
……、加護が得られたのは……今ので4秒ってとこ、か。
[思わず悪態をつきそうになって――かみ殺すように押し黙る。この場合は、まだ見放されていないことに感謝をするべきなのだ。]
…少なくとも父さんならそう言うだろうね。
[もしかしたら庭園の一角が突然明るくなったことを不審がった者もいるかもしれない。
どのみち、もう館の外にいる理由もなく。
彼は館内――今度こそ大ホールへと向かうことにした]*
(253) 2014/11/06(Thu) 13時半頃