[たぶんね、と母は頷いた。それは、あんたにとって不利にはならないと思う、と。母らしいことを、殆どしない人だった。時折与えられる気まぐれに縋って秋野は生きてきたし、だからこそその言葉は、殆ど奇跡に近かった。それは、秋野にとって、かみさまの啓示に等しい。だから、秋野は今度こそ「分かったそうする」と言って、勉強をして、北洋高校に合格した。そうすると決めたら一直線の秋野が、あの時だけは毎日のようにがむしゃらに勉強していたことを、那由多なら覚えているかもしれない。そして、合格通知を手にした頃、秋野の家に、母親という存在はもう既にいなかった。>>1:223]
(252) 2015/06/23(Tue) 18時頃