―夕暮れ時の集会所への道―
[一度我が城へと戻ると、床に散らばった白を何個か拾い上げ。
暗い背表紙の色をした本と一緒に革製の鞄へ放りこんだ。
道すがら、何度か「人」に話しかけられたが、瞳の奥に強くなっていた怯えの色を確りと見てしまい。
何時もならば話し込んでしまうような内容も、約束があったためか、それとも人を気遣ってか早めに切り上げてしまった。
自分達にとって脅威になり得るもの、異端分子。
それを警戒し、排除しようとするのは人の本能か生き物としての本能か。
子供達は変わらず楽しげに声をあげながら、夕暮れ時の帰り道を親と手を繋ぎ帰る。
すれ違った瞬間、少しだけ避けられてしまったのは当然か。
……冷静な部分がそう判断しても、彼等の笑顔を知っているからか、僅かに胸が痛んだ気がする。
噂が真実ではない事が染み渡れば、元の形へと姿を戻すのだろうか。]
(……答えは恐らく、否だな。)
[同胞のため、自身が人との架け橋になろうと。
そうするためにはまず相手の事を知ろうと始めた研究や努力が、簡単に塵と化しそうな空気を肌で感じながら。
男は再び集会所の扉を潜るのだった。]
(251) 2015/05/12(Tue) 02時頃