[視線を上げて、古城を眺める横顔の女性の絵を眺める。
口元が緩むのはその時間だけ。
取り繕うことを忘れ漏れた笑みを浮かべながらもその絵を眺めていた。
彼女にあるものに恋をしていることは告げなかった>>233
ジェフは母のように、祖母のように、なりたくないと思っていた。
ジェフはいっそう絵画の中に描かれたものたちに恋をした。
絵の中で僕は、きっと何者でもない。
だからこそ僕は静かに焦がれるだけで、何も失うこともない。
そう高を括っていたからこそ、現状に甘えていた。
十二時の鐘が鳴る。
“帰ろうか”それがいつも『かくれんぼう』の終わる合図。
ドロシーの揺れる足を見る。“靴、脱げないようにね”
少し大きかったような気がしたからそんな声をかけながら、椅子に手をかける。
白い足を包む靴は何で出来た靴だっただろう。
月明かりに映る靴は光って見えた]*
(251) 2016/07/28(Thu) 13時頃