[それから、飛び込んでくるドロシーを受け止めていたが、年を重ねるごとに開く体格差を意識し始めてからはなくなってしまった。
それでも笑顔で駆け寄って出迎えてくれる姿>>232はいつも人の心を和ませてくれたものだ。
『かくれんぼう』は昼より夜に開かれることが多かった。
仕事の都合からそうなってしまった。
長針と短針、2つが重なってしまう時間まで彼女の少し前に立つ。
その位置が心地よかったのだ。
彼女は、ジェフが近くを許す数少ない人物だった。
彼女が可愛い子であることは分かっていた。
けれど実にジェフは鈍感で、女性の聡い一面には気付かず、彼女の部屋にある本を手にとっては眺めていることが多かった。
絵画に会いに来ている筈だった。
幼い頃。ドロシーの姉も来るという場所に、窓から花が見えるというドロシーのとっておきの場所に連れて行ってもらい、視界に収めたあの絵画。
思わず口付けようとした時はさすがに自分も頭がおかしいのではないか、などと考えることもあったけれど、それほどまでにあの絵をあいしているのだと思っていた。
心の底からそう思っていると、思っていた。
男は馬鹿ではないかもしれないが、愚かではあったのだろう]
(250) 2016/07/28(Thu) 13時頃