─回想:ドロシーと─
[かくれんぼうが鬼ごっこに変わる前に、ドロシーについてしまう。
翻ったスカートの裾がふんわり揺れるのを眺めながら、声>>226に耳を傾けをる。
“へえ! でも有名な言葉にもあったよ。『きれいはきたない、きたないはきれい』とか。
人によって見え方なんて変わるものかも。僕は見てみたいけどね。君が綺麗だと思った花が。名前も気になる。”
[花に触れることはなかった。
名について尋ねることも。花が持つ意味も。ただ、その時ばかりはドロシーに尋ねたのだ]
“あいつ”は、ほら。きみの姉さんだよ。
[けども、自分が答える側になればジェフはまっすぐな視線から逃げるように瞬きを数度繰り返した。
ジェフよりかは幾つか年上のドロシーの姉を、何故か自分は直視し辛く、また、気まずい思いを抱えていたのだ。
当時のジェフはその感情に相応しい名前など知らなかったから、連れられていた筈のドロシーの手首を捕まえようと腕を伸ばせば]
ほら。そんなことより早く行こうよ。ドロシー。バレちゃう前に。
[手入れがあまりされていないけれど、見事な花が咲き誇っていた庭園を背に足を進める。伸びる影がゆらゆらと揺れていた]
(249) 2016/07/28(Thu) 13時頃