[言霊を使えば、あるいは生き延びる術もあったのかもしれない。
けれど、それは一時的なものに過ぎないことを男は知っていた。
彼をやり過ごしたところで、動けない状態を他の参加者に発見されてお終い。そんな事態になるよりは、より勝ち筋があるものを残すのが正しい選択だろう。]
…あの、さ
腹を貫かれるのと、心臓を抉られるのって、どっちが辛いんだろうなぁ
[薄っぺらい腹部に、深々と刺さる刃>>237。それを他人事のように眺めて、最初に出た台詞がそれだった。
脳裏に浮かんだのは、8年前に最後に見た妹の寝顔。安らかな表情をしていた気がするから、きっと苦しまずに眠れたのだと思いたい。]
−−納得いかないって顔をしてるね?
イオリを殺したくせに、諦めが良すぎる…って、顔に書いてある
[黒いパーカーに溢れる赤色は滲まず、ただ布を重く濡らしていく。
反撃を試みるでもなく、距離が詰まった相手の目を覗き込んで、男は小さく首を傾けた。]
(248) 2014/12/12(Fri) 01時頃