[肩に触れてきた手の感触に、俯き加減だった顔が上がり、少し驚いたような視線が雪へと向いた。] ……。 雪はやさしいな。 おれは、錠前のくせに中の物を守ることができなかった。 そしてそのまま、何もできぬまま朽ちた。 ……けれどそれまでは、お前のような人間達に、ずっと、大切に扱われていたんだ。[嬉しそうに、ゆるく首を傾げれば、赤錆の髪がざらりと揺れて音をたてる。] 有難う。 誰かに覚えられているということは、おれにとって、何よりも嬉しいことだよ。
(244) 2013/09/02(Mon) 02時頃