[背には女の柔い肉が二つ、背中を押しているのを感じる>>210。
ふにふにとした感覚がとても心地良く、温かくて、何処かひんやりとした吐息が犬耳に当たりぴくん、と跳ねた。
耳を震わせながら聞こえるのは、取引。触らせる代わりに、魔力を与える、と。悪魔の取引だ。]
…っ、わ、分かった。
分かった、から、 早く、してくれ!
[断る選択は無く、何故だか触われる事を強請る。
先程から尻尾から感じる、潮の迸る様な魔力。
彼女からしたら些細なものだろうが、此方は大波が押し寄せる様な、そんな感じ。
押し流すような潮の魔力は、黒い毛に覆われた犬の手から、五本の指と人の肌を保つ人間の手へと変わっていった。
そんな事に気付かない犬は、はっはっ、と短く早い吐息を漏らしながら、自ずと尻尾の動きを早めていく。]
んん、 …は、ァ……っ。
く、ぅ…ァ、そこっ、そこだ、ぁ。
そこを、もっと……っ、ふっ。
[人の手となった指は、テーブルクロスを握り締めながら、燻る様な疼きを如何にかしたくて仕方が無い。
仕方が無いから、尻尾の根元を撫ぜる女に強請り、尾の根を撫でて貰える様に乞い願う。]
(243) 2015/08/02(Sun) 12時半頃