[ 女探偵との出会いから数年、お転婆さが落ち着きだした頃のこと。きっかけは花だった。東の国へと家族旅行した時に、その店に目を留めた。
正確には、そこに飾られていた花に。]
このお花……
(あの城の周りに咲いている)
[ オーレリアの国ではわざわざその花を見に観光に行く者がいるくらい、あまり見かけることのない花。]
あの、このお花は沢山咲いているの?
[ それが異国の花屋に並んでいるものだから、つい寄ってしまった。店員に話しかけた後でしまった、と思ったものの、彼女は英語が理解できるようだった。
異国で言葉が通じる事が嬉しくて、痺れを切らした両親に呼ばれるまで、少しだけ会話した。
もっと話したくて手紙を出していいか、と申し出たのはオーレリアの方だった。
別れ際、その花を買った。脳裏に聞こえてくる“僕”の声に嬉しさと懐古の色が混ざる。
露蝶が伯爵夫人の庭師だったことなど知らなかった。
何度かやりとりをするうちに、知る事ができたかもしれない。
手紙の最後をCにしたのは、“僕”の真似。丁度彼もオーレリアも、ミドルネームのイニシャルは同じだった。]**
(240) 2016/07/28(Thu) 08時頃